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日外会誌. 120(5): 500-506, 2019


特集

外科医育成のためのOff-the-job training (Off-JT)の現状と将来

2.心臓血管外科領域のOff-JTの現状

福島県立医科大学 心臓血管外科

横山 斉

内容要旨
長年の修練を要する多くの領域(競技スポーツ,楽器演奏など)で認知心理学の進歩により技能習得に関する謎が解明されつつあり,効率的トレーニングに応用されている.これらの領域でエキスパートとなった人々の練習法(Deliberate Practice)が外科修練にも応用されようとしている.
心臓血管外科専門医認定機構は2017年の心臓血管外科専門医試験受験者より5年間でOff-the-job training(Off-JT)30時間以上の経験を必修とした.
導入には種々の背景がある:1)技術難度の高い低侵襲手術(心拍動下手術,小切開手術など)の普及により若手外科医の執刀機会が減少した.2)医療経済上の要請により手術時間短縮が求められ手術室での教育指導の時間が減少した.3)手術室をトレーニングの場とする事が倫理的に許容されない社会的認識がある.4)専門医制度改革でより短期間での技術習得プログラムが必要となった.
現状では,Off-JTの経験頻度は増加しているが未だ普及には程遠く,トレーニング環境も不十分である.しかし,専攻医はOff-JTの有効性を実感しており,日常的糸結び練習などは定着している.安価で簡便なツールが身近にあれば急速に普及する可能性がある.
研修ツールの不足,カリキュラムの未整備,指導医からの評価とフィードバックのノウハウ不足など課題は山積している.専攻医と指導医を支援すべく心臓血管外科専門医認定機構は,テキストブック出版をはじめOff-JT機会提供などOff-JT情報の共有と支援を行う体制を整えつつある.

キーワード
Deliberate Practice, Fitts-Posner model, OSATS, GRIT

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