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日外会誌. 120(4): 436-441, 2019


特集

膵手術・膵癌治療の進歩

8.膵頭十二指腸切除術後の出血に対する予防と治療

1) 大阪大学大学院 消化器外科
2) 九州大学大学院 消化器・総合外科

江口 英利1) , 岩上 佳史1) , 秋田 裕史1) , 浅岡 忠史1) , 野田 剛広1) , 後藤 邦仁1) , 小林 省吾1) , 森 正樹2) , 土岐 祐一郎1)

内容要旨
膵頭十二指腸切除術は,膵液瘻をはじめとした術後合併症の発生率が比較的高く,術後早期の出血のみならず,術後合併症が起因となって発生する遅発性の出血も発生することがあり,このような出血を総称して膵切除後出血(postpancreatectomy hemorrhage,PPH)と呼ぶ.PPHは,出血発生のタイミング,出血部位と原因,重症度の3項目を用いて分類され,さらにそれら3項目を用いて臨床的グレーディングが定義されており,A,B,Cの3段階に分類される.最も重篤なグレードCは生命に危険を及ぼす程度の出血であり,一刻も早い診断と治療が要求される.最近のメタアナリシスでは,遅発性の術後出血に対する治療として,手術による止血よりもIVR(interventional radiology)が優れるとの報告がなされた.PPHのリスクを少しでも下げるためには,術中に肝円索を用いて脈管を保護したり,仮性動脈瘤に対して積極的に塞栓を行ったり,前駆出血を認めれば迅速にIVRを行うなど,注意深い対応が要求される.膵切除を行う外科医は常日頃からPPHの病態,治療法に関する知識の整理を行い,最善の対応策ができるように心がける必要がある.

キーワード
postpancreatectomy hemorrhage, 前駆出血, 膵液瘻


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