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日外会誌. 120(4): 418-424, 2019


特集

膵手術・膵癌治療の進歩

5.膵体部癌に対する安全性を考慮した腹腔動脈合併尾側膵切除

北海道大学大学院・医学研究院 消化器外科学教室Ⅱ

平野 聡 , 中村 透 , 浅野 賢道 , 岡村 圭祐 , 土川 貴裕 , 野路 武寛 , 中西 喜嗣 , 田中 公貴 , 村上 壮一 , 海老原 裕磨 , 倉島 庸 , 七戸 俊明

内容要旨
腹腔動脈合併尾側膵切除術(Distal pancreatectomy with en bloc celiac axis resection:DP-CAR)は進行膵体尾部癌に対する術式として近年,広く普及してきた.本術式の特殊性は腹腔動脈(CA)の切離によりダイナミックな血行改変が行われる点にある.この特殊性を反映して術後の合併症が高率であることが認識されているが,実際,教室における経験例80例の集計ではClavien-Dindo分類におけるGrade Ⅲ以上の合併症発生率は40%を超える.
本術式では,大動脈上でのCAの処理や,下膵十二指腸動脈(IPDA)から胃十二指腸動脈(GDA)に至る側副血行の温存操作など,手技の確実性を要求される場面が多い.また,術後の虚血性胃症に対しては術前の総肝動脈塞栓の効果は不十分であり,虚血が疑われた症例には左胃動脈の再建で対処すべきと考える.最近,左下横隔動脈や左胃動脈を温存することで虚血が予防できる可能性が示唆されていることから,腫瘍の進展度からみて可能であればこれらの動脈温存を考慮すべきである.

キーワード
進行膵体部癌, 腹腔動脈合併切除, 虚血性胃症, 膵液瘻


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