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日外会誌. 120(1): 37-43, 2019


特集

大腸手術における周術期感染対策―EBMに基づいたbest practice―

6.術後感染を防ぐ手術手技と管理の工夫―穿孔性腹膜炎手術―

東邦大学医療センター大橋病院 外科

長尾 さやか , 榎本 俊行 , 斉田 芳久

内容要旨
穿孔性腹膜炎による腹腔内感染症は感染源コントロールが奏功する病態である.早急な診断,原因疾患と腹膜炎に対する適切な手術手技,術後合併症に対する集学的な治療が必要となる.術前管理として適切な治療抗菌薬を選択し,術前の全身状態評価と同時にストマ造設の可能性も検討する.腹膜切開後は創縁保護具を使用する.憩室穿孔症例では一期的に腸管吻合を行い,必要に応じて予防的人工肛門を造設する術式が提唱されているがハイリスク症例などではHartmann手術が選択される.大腸癌穿孔症例では,腫瘍の切除が不能であれば腫瘍口側に人工肛門を造設しドレナージを行い,腫瘍の切除が可能な場合には腫瘍を含む腸管を切除する.一期的吻合の選択は慎重に行うべきである.腹腔内洗浄が施行されるが洗浄液量や洗浄液の種類に一定の見解はない.閉腹操作に移る際手袋と器械を交換する.創感染の可能性が高い症例では開放創として二次治癒を待つか,感染兆候が治まったことを確認し遅延一時縫合閉鎖を行う.周術期の血糖は200mg/dl以下が推奨されているが期間については規定されていない.術中留置されたデバイスは不要となり次第速やかに抜去する.二期的に人工肛門閉鎖や癌の根治術などの手術を必要とする症例においては,術前に施行できなかった禁煙指導,口腔ケア,呼吸指導などの基本的な感染対策を全身状態が落ち着き次第施行することが望ましい.

キーワード
穿孔性腹膜炎, SSI, 腹腔内洗浄, 憩室穿孔, 腹腔鏡手術


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