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日外会誌. 119(4): 387-394, 2018


特集

3次元臓器構築と外科領域への応用

5.呼吸器系の3次元臓器構築と外科領域への応用―再生気管および再生肺―

長崎大学大学院 医歯薬総合研究科腫瘍外科学

土谷 智史 , 松本 桂太郎 , 宮崎 拓郎 , 畑地 豪 , 土肥 良一郎 , 渡邉 洋之助 , 朝重 耕一 , 谷口 大輔 , 永安 武

内容要旨
将来外科領域に応用される呼吸器系の3次元臓器として,気管と肺が挙げられる.気管については,ポリプロピレン(PP)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの人工物,大動脈などの生体用材,脱細胞組織骨格を利用した再生気管とさまざまな取り組みがなされ,既に臨床応用が始まっている.GMP基準のものの臨床報告や治験が開始されていることに鑑みると,商品化も近いと考えられる.一方で,肺は呼吸運動によって収縮,拡張を繰り返す動的臓器であり,他の臓器に比較して肺の3次元構築へのハードルは高い.オルガノイド等では分岐する気管支肺胞構造は構築できず,脱細胞化組織骨格を利用した手法が認知され始めたのみである.しかしながら,この手法で再生したラット肺は移植後数時間でその機能を廃絶した.原因は脱細胞化溶液による細胞外マトリックスの障害と不十分な再細胞化に伴う血栓形成であると考えられる.幹細胞研究の発展に伴い,ES細胞,iPS細胞,間葉系細胞と様々な細胞が再生研究に使用されているが,現在は使用する細胞種の選定や,再細胞化後の分化成熟法など再生行程の改善が行われている.また豚などの異種組織骨格をヒト細胞で再細胞化し,異種の臓器から自己の臓器を創出する研究も始まっているが,現状では外科領域への応用にはまだかなりの時間がかかると考えられる.

キーワード
肺再生, 気管再生, 脱細胞化, Bio-3D printer, 組織工学

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