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日外会誌. 118(2): 173-178, 2017
特集
外科診療におけるチーム医療の現況と展望
7.乳がん診療におけるチーム医療
内容要旨近年,乳がん治療の進歩は著しく,がんの生物学的特性に応じた個別化治療に,治療を担当する臨床医のみならず,病理医から基礎医学研究者,分子標的療法特有の副作用に対応する他領域の専門家などが関わる必要が生じている.一方で「医師中心の医療」から「患者中心の医療」への変貌とは,「疾病」から「患者」への医療の対象の変化に他ならない.生物学的側面のみならず,心理的・社会的・倫理的・経済的側面を含めた「病いを患う患者をまるごと診る」全人的医療が注目されている.「乳がんを患うひと」を診ることになると,患者や家族の生活や思いが重視されて必然的に医療の中心は患者と家族になる.これは従来の「医師・疾患指向型システム(Doctor or Disease Oriented System)」から新たに「患者・問題指向型システム(Patient or Problem Oriented System)」へのパラダイムシフトと表現されている.このように急性期から慢性期疾患へと移行し,患者の生活や心理,経済といった全人的医療が求められるために「チーム医療(Multidisciplinary care or treatment)」がクローズアップされてきたと考えられる.また,がん対策基本法ががん医療の均てん化や地域連携を課題としていることや「チーム医療」が必要となった背景に患者の生活の重要視があることなどから,今後医療は病院完結型から地域完結型へと展開し,チーム医療の場は院内から地域へと広がり,多職種から多施設によるチーム医療が構築されていくことになるものと考えられる.
キーワード
チーム医療, 乳がん, 若年性乳がん, 地域連携, advanced care planning
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