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日外会誌. 118(2): 155-160, 2017


特集

外科診療におけるチーム医療の現況と展望

4.周術期の口腔ケア―食道癌,肺癌手術における周術期口腔機能管理―

1) 徳島大学大学院 医歯薬学研究部胸部・内分泌・腫瘍外科分野
2) 徳島大学病院 口腔管理センター

西野 豪志1) , 吉田 卓弘1) , 井上 聖也1) , 青山 万里子1) , 滝沢 宏光1) , 丹黑 章1) , 山村 佳子2) , 東 雅之2)

内容要旨
がんの周術期治療において,術後合併症予防や早期回復を目指したチームアプローチの重要性が指摘されている.各種がんの周術期において,医科歯科連携による包括的な周術期口腔機能管理により術後肺炎などの感染性合併症を予防し,入院期間の短縮,患者のQuality of Lifeの向上,医療費の抑制などが期待されている.特に,食道癌および肺癌の根治手術では,リンパ節郭清による反回神経麻痺のリスクが高く,術後誤嚥性肺炎を起こしやすい.適切な口腔機能管理が行われることにより口腔内細菌を減少させることで誤嚥性肺炎のリスクを軽減する効果が期待できる.当施設では2014年以降,肺癌,食道癌全例に周術期口腔ケアを導入しており,2012~2015年に当科で根治手術を行った肺癌100例,食道癌100例を対象に,周術期口腔ケアの導入前と導入後の術後肺炎の発生頻度について後ろ向きに比較検討した.肺癌の術後肺炎の発症は導入後に有意に減少し,術後在院日数も有意に短縮していた.食道癌については劇的な改善は認めなかったが,対象患者のほとんどが術前化学療法を受けており,術前化療導入の時点で,口腔ケアが行われたことにより術後肺炎の頻度が低下していると考えられた.今後,胸部外科領域において合併症予防のためのチームアプローチは非常に重要な意味をもち,医科歯科連携による周術期口腔機能管理は広く行われるべきであると考える.

キーワード
食道癌, 肺癌, 周術期, 口腔機能管理, 肺炎予防


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