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日外会誌. 117(6): 530-535, 2016


会員のための企画

次世代シークエンスがもたらす個別化医療の新時代

東京大学医科学研究所 臨床ゲノム腫瘍学分野

古川 洋一

内容要旨
超並列化シークエンス解析技術は,ゲノム解析の分野で革新的な変化をもたらした.この技術を用いた次世代シークエンサー(NGS:Next-Generation Sequencer)による腫瘍組織のゲノム解析は,がんに蓄積した多くの遺伝子変異を明らかにし,腫瘍発生・進展メカニズムの解明に大きく貢献した.また,がん化に関わる新たなドライバー遺伝子変異の発見を通じて,新規分子標的薬の開発にも寄与してきた.抗がん剤に対して異なる反応性を示す腫瘍組織の解析は,薬剤の効果あるいは耐性に関わるゲノム情報を提供し,個別化医療の開発に役立っている.今後一層個別化医療を発展させる為には,ゲノム情報と臨床情報を統合したデータベースの整備や,ビッグデータを解析する情報処理システムの開発,そして侵襲の少ない生体試料解析法の臨床応用などが求められている.NGSを用いたさらに多くのゲノム解析により,がん患者に対してより精密な医療が提供されることが望まれる.

キーワード
次世代シークエンサー, ゲノム解析, 分子標的薬, 個別化医療, 人工知能

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