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日外会誌. 117(4): 308-315, 2016
特集
機能温存を目指した胸部悪性腫瘍手術の現況と将来
7.横隔神経―横隔膜の機能再建手術―
内容要旨
横隔膜を支配する横隔神経は第3,4,5頸神経根に起こり縦隔に沿って長い距離を下降する.横隔神経損傷は頸部から胸部の悪性腫瘍の神経浸潤や神経圧迫, あるいは手術に伴う医原性損傷が多い.胸部では肺癌や縦隔腫瘍が原因となりうる.
従来片側の横隔神経麻痺に対しては横隔膜縫縮術を行って対側の横隔膜機能を補助する治療が広く行われてきた.しかし横隔膜の筋肉の機能を回復させるものではなく,両側麻痺に対しては効果を期待できない.
損傷した横隔神経を神経縫合や神経移植術,神経移行術などの方法で再建して横隔膜の機能回復を図る試みもなされてきたが,歴史が浅く報告も限られる.一方,末梢神経外科の分野では拡大鏡,顕微鏡手術用の器具や縫合糸を含む顕微鏡下手術の方法で神経を再建し機能回復を図る治療が進歩してきた.神経縫合,神経移植,神経移行,何れも末梢神経外科の分野では日常的な治療方法である.横隔神経麻痺に対してもこれらを適切に応用することで横隔膜機能の回復が期待できることを,実験的研究と臨床応用の双方で紹介した.
経路の長い横隔神経では回復に時間がかかる症例が存在すること,長期の麻痺症例では回復が限られることから,症例によっては横隔膜縫縮術の併用を考慮すべきである.
近年集学的治療の進歩により局所進行胸部悪性腫瘍の治療成績の向上が報告されている.横隔神経の再建が広まれば,さらに治療適応が拡がり成績を改善する可能性がある.
キーワード
横隔神経麻痺, 横隔神経損傷, 神経縫合, 神経移植, 神経移行術
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