[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (311KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 117(2): 136-140, 2016


会員のための企画

臨床試験に必要な倫理

東北大学大学院 医学系研究科医療倫理学分野

浅井 篤

内容要旨
医学の進歩は人間を対象とする諸試験を要する研究に根本的に基づくものであり,医学研究の必要性が極めて高いことは論を待たない.しかし,わが国では研究対象者(被験者)からインフォームド・コンセントを取得せずに行われた臨床研究や,研究結果の捏造および偽造を含む研究不正事件が幾つも起きている.医薬品や医療機器の安全性および有効性等を検証する臨床試験は,研究対象者の身体および精神または社会に対して大きな影響を与える.そのため研究対象者の福利は科学的および社会的な成果よりも優先されなければならず,人間の尊厳,人権および健康が守られなければならない.本稿では主に『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針』と『ヘルシンキ宣言』を取り上げ,臨床試験に関わる人が最低限知っておかなくてはならない研究倫理のエッセンスを解説する.まず医療倫理の一般的な原則と研究倫理に深く関わる原則を紹介する.それらには研究対象者の人格・尊厳・人権・プライバシーの擁護・尊重,倫理審査,科学的社会的価値,リスクと利益の合理的均衡,インフォームド・コンセントの必要性等がある.次に研究者の責務を述べ,研究対象者等への配慮,研究の倫理的妥当性および科学的合理性の確保,そして教育・研修の重要性を解説する.その上で,緊急状況における臨床研究と未実証治療の使用について言及する.

キーワード
研究倫理, 臨床試験, 倫理指針, ヘルシンキ宣言, 未実証治療

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。