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日外会誌. 116(6): 378-383, 2015
特集
ノンコーディングRNAの外科領域における意義
7.心血管外科における意義
I.内容要旨マイクロRNA(miRNA)はメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳阻害や不安定化によって,その遺伝子発現を転写後に調節する「ファインチューナー」としての役割を担っており,正常細胞においては発生や細胞分化などの正常機能を維持している.逆にその調節機構が破綻すると癌や循環器疾患など多くの疾病をもたらす.高齢化とともに増加傾向にある心不全に対して従来の薬物療法,外科治療や機械的補助に加えて,幹細胞移植や遺伝子治療といった新しい手法を統合させることで治療法の一層の飛躍が期待できる.中でも特定のmiRNAを用いて線維芽細胞をリプログラミングして心筋細胞を誘導する技術や,逆に高血圧性心不全を誘導,加速するmiRNAや細胞内カルシウム・ハンドリングを抑制するmiRNAのantagonistを用いて心機能改善を目的とする研究が注目を集めている.特にmiRNA-145は血管平滑筋細胞のフェノタイプを分化型に維持する分化制御・誘導因子であることが報告されており,われわれの実験においても自家静脈グラフトに遺伝子導入することで,その新生内膜の増殖を防ぎ,開存性の向上に期待できると考えられた.miRNAは最初から細胞内に存在する核酸分子であり免疫応答などの副反応は起きにくいと考えられ,miRNAの生体への有用性は今後,益々増加してくるに違いない.既存の心臓血管外科手術に加えてmiRNAを用いた遺伝子治療を統合させた新しい治療法が期待できる.
キーワード
マイクロRNA, 遺伝子治療, リプログラミング, microRNA-145, 血管平滑筋細胞
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