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日外会誌. 116(4): 243-248, 2015


特集

外科周術期管理の最前線―術後回復力強化プログラム―

5.消化器外科手術後の痛み評価と鎮痛対策

関西医科大学 外科

海堀 昌樹 , 飯田 洋也 , 松井 康輔 , 石崎 守彦 , 松島 英之 , 坂口 達馬 , 福井 淳一 , 井上 健太郎 , 松井 陽一 , 權 雅憲

I.内容要旨
術後疼痛管理は術後早期からの経口摂取および離床を促進させるために重要である.加えて,腸管蠕動運動を抑制しない,下肢脱力を起こさない,催吐作用の出にくい疼痛管理が望まれる.術後痛を軽減することにより,患者の術後経過に対する満足度が増加する.術後疼痛の評価には一般的にVAS(Visual Analogue Scale)が用いられてきたが,患者の主観や経験に大きく左右され,定量的評価の信頼性に欠ける.近年,患者の痛みの強さを定量的に測定,評価するために知覚痛覚定量分析装置(PainVisionTM)が開発された.今回われわれは同分析装置を用いて,各種消化器外科手術における術後疼痛を評価した.対象術式は開腹および腹腔鏡下肝切除術,腹腔鏡下胆嚢摘出術,開腹および腹腔鏡下胃切除術とした.右肋弓下切開による肝切除術の術後1~5日目までの痛み度は平均100~120を推移し,他術式(腹腔鏡下胆摘・胃切除)に比べ,有意に高値であった.同術式の痛み軽減は術後7日目であった.VASでは術式および術後経過を通じて有意な変化は認めず.右肋弓下切開肝切除術患者に対して術後予防的非ステロイド性抗炎症薬投与により術後1~3日目の痛み度は軽減したが,術後1週間までの創部の「鈍痛」および「圧痛」の患者訴えは抑止できなかった.以上より,術後疼痛は術式・疾患毎に異なることが確認された.術後疼痛をより客観的に定量的に評価することは,真の早期離床や患者QOL向上につながっていくものと考えられた.

キーワード
消化器外科手術, 肝切除術, 疼痛評価, 術後鎮痛対策


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