[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (340KB) [会員限定]

日外会誌. 116(2): 109-113, 2015


特集

炎症性腸疾患外科治療の最近の動向

7.潰瘍性大腸炎の外科治療

兵庫医科大学 炎症性腸疾患学講座

池内 浩基

I.内容要旨
潰瘍性大腸炎(以下UC)に対する外科治療は内科的治療に影響を受けるが,内科的治療はここ10年で大きな変化を示している.手術適応で特徴的なことは,癌/dysplasia症例が急激に増加していることである.これは,手術には至らないが,粘膜治癒まで寛解しない,緩やかな炎症が持続した症例が増加しているためと思われる.また,強力な内科的治療の選択肢が増加したため,治療薬の上乗せや変更が多く行われるようになり,このような治療を行ったにもかかわらず奏功しない症例が緊急手術となっている.そのため緊急手術症例は最近増加傾向である.
手術症例の年齢を見ると,有意に高齢化している.70歳を超える手術症例も珍しくなくなっているが,問題は高齢者の緊急手術症例の予後が不良なことである.高齢者では手術時期の見極めが特に重要であるが,内科医と外科医の間でやや意見が異なる.
UCに対する術式は,大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(ileal pouch anal anastomosis:IPAA)と大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(ileal pouch anal-canal anastomosis:IACA)が基本術式である.発癌症例ではIPAAを,高齢者ではIACAを選択するというコンセンサスはすでに得られている.
術後の問題点としては,以前から回腸嚢炎は報告が多かった.最近,術後に胃・十二指腸病変や,小腸病変が増悪する症例報告が増加している.特に出血症例では止血が困難な症例もあり,致命的となる.現在その実態調査のため,厚生労働省(以下厚労省)の班会議において,その全国調査が行われようとしている.

キーワード
潰瘍性大腸炎, 外科治療, 炎症性発癌, 術後合併症


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。