[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (574KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 116(2): 87-93, 2015


特集

炎症性腸疾患外科治療の最近の動向

3.Crohn病肛門病変に対する治療

福岡大学筑紫病院 外科

二見 喜太郎 , 東 大二郎 , 平野 由紀子 , 池田 裕一 , 三上 公治 , 平野 公一 , 三宅 徹 , 高橋 宏幸 , 前川 隆文

I.内容要旨
Crohn病(CD)において肛門部の病変は高頻度かつ難治性で,長期的なQOLに深く関わる.最も頻度の高い瘻孔・膿瘍の特徴は複雑多発性で,適切な治療法の選択には麻酔下の検索(EUA:Examination Under Anesthesia)による正確な診断が最も重視されている.薬物治療も行われるが,抗TNF-α抗体製剤を用いても治癒につなげることは難しい.局所的な外科治療はドレナージによる症状軽減効果だけでなく,肛門機能の保持にも優れるseton法(loose seton)が適する.括約筋にダメージの加わる通常の痔瘻手術(lay open法)はsimple fistulaに対しても適応には慎重な判断を必要とする.人工肛門は日常生活にも支障をきたすほどの症状から解放され,社会復帰には有用だが閉鎖は難しい.現状ではseton法と抗体製剤の併用が最も期待されているが,長期的な有用性には結論は出ていない.肛門病変に対する管理としては症状の軽減,QOLの回復に加えて肛門機能にも配慮した治療が求められ,直接視て触れることのできる肛門部の診療に慣れ,病状の変化に応じた迅速な対応とともに近年増加している肛門部癌を念頭に置いた日常診療が何より重要と考える.

キーワード
Crohn病, 肛門病変, 外科治療, seton法ドレナージ, 癌合併

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。