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日外会誌. 116(1): 45-49, 2015


特集

食道胃接合部癌の治療―今後の展望―

6.食道胃接合部癌における内視鏡外科手術の利点とピットフォール

京都大学 消化管外科

岡部 寛 , 角田 茂 , 田中 英治 , 久森 重夫 , 水本 素子 , 村上 克宏 , 坂井 義治

I.内容要旨
食道胃接合部癌に対する内視鏡外科手術は,欧米で下部食道腺癌の頻度が高い影響もあり,これまで海外からの胸腔鏡,腹腔鏡を用いた低侵襲食道切除術(Minimally Invasive Esophagectomy:MIE)の報告が多かった.しかし,近年本邦において上部胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術が少しずつ普及し始めたのに伴い,腹腔鏡下経裂孔アプローチによる切除・再建の報告がなされるようになってきた1) 2) .腹腔鏡下アプローチは,下縦隔の視野が良好であることに加え,上部胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術において,術中出血量と術後合併症が少なく,在院期間が短いという利点を示す報告もあり,将来食道胃接合部癌に対しても同様の利点が明らかになる可能性がある3) .一方,食道胃接合部癌を含む対象に対するMIEは,海外の無作為化比較試験において開胸・開腹食道切除術よりも術中出血量,術後疼痛,反回神経麻痺,呼吸器感染症が有意に少なく,QOLも良好であったと報告されており,低侵襲であることのエビデンスが存在する4) .食道胃接合部癌に対する術式とそのアプローチは,腫瘍の局在や大きさにより様々なバリエーションがあり,一概に内視鏡外科手術の利点を考察することは難しいが,その低侵襲性を生かすためにはいずれの術式においても安全で長期QOLに優れた再建方法の確立が課題といえる.

キーワード
食道胃接合部癌, 腹腔鏡下胃切除術, 低侵襲食道切除術

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