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日外会誌. 115(6): 306-311, 2014


特集

わが国の小児外科五十年のあゆみ

2.新生児外科の進歩と治療成績

九州大学大学院 医学研究院小児外科学分野

田口 智章 , 永田 公二 , 木下 義晶 , 江角 元史郎

I.内容要旨
新生児外科統計は日本小児外科学会の誇るべき貴重なデータで,学会の発足から50年にわたり継続してきた.それによると新生児外科の症例数は50年間で5倍以上に増加し2008年は3,517例となった.疾患別の死亡率の推移をみると新生児外科の重症疾患(臍帯ヘルニア,腹壁破裂,横隔膜ヘルニア,消化管穿孔,食道閉鎖)の死亡率は1964年は約60%であったのが2008年では15%程度に著明に低下している.つまり重症心奇形や染色体異常や多発奇形合併例以外はほとんど生存できるようになった.そのため傷の残らない手術を工夫する余裕がでてきた.患児の完全なる良好なQOLを考慮するとできるだけ傷の残らない手術の追及は重要と思われるため,従来の皺を利用した整容性に富む術式を開発している.
一方,原疾患の重症度のため救命困難な症例が存在するのは事実で,肺低形成高度の横隔膜ヘルニアや巨大な仙尾部奇形腫などであり,胎児治療や早期娩出による新生児治療への早期移行などの治療法の選択が必要である.また長期予後からみると極低出生体重児の消化管穿孔は早期診断や初期治療にさらなる工夫が必要である.

キーワード
neonatal surgery, antenatal diagnosis, esophageal atresia, minimally invasive operation, quality of life


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