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日外会誌. 115(4): 231-235, 2014


特別寄稿

コンフリクトが困難化しやすい疾患·診療行為類型の検討―裁判例からの考察―

金沢大学附属病院 経営企画部,越後純子法律事務所

越後 純子

I.内容要旨
医療現場におけるコンフリクトを効果的に回避するため,本研究では,836例の医療訴訟判決について,件数の多い疾患等の特徴を踏まえ類型化し,医療機関の勝訴率を分析した.
その結果,予後と不十分なインフォームドコンセント(IC)が裁判所の判断に影響していることが判明した.予後については,肺塞栓,敗血症等,一般的に不良とされる類型で,平均に比して勝訴率が高く,急性喉頭蓋炎や絞扼性イレウス等,適切な治療開始により予後の改善が見込める可能性があるものは低かった.ICについては,未破裂脳動脈瘤の予防的治療,検査目的のERCP後膵炎等,事前理解が不十分な類型で,平均より低い勝訴率となった.さらに,急性冠動脈症候群のように,治療結果の不確実性が高いにもかかわらず,緊急性が高いため,十分な事前のICを得ることが困難な類型も,勝訴率が低いことが判明した.この類型の解決は,最も困難であり,今後の課題として検討を要する.

キーワード
医療訴訟, コンフリクト インフォームドコンセント(IC)


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