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日外会誌. 115(4): 212-216, 2014


会員のための企画

極低出生体重児の外科治療

小児外科の立場から

和歌山県立医科大学 第2外科

窪田 昭男

I.内容要旨
極低出生体重児の外科治療が抱える問題には,第1に外科治療以前に低出生体重児,特にELBWの生存者が共通して抱える問題,第2に低出生体重児に特有の疾患に対する外科治療が抱える問題,第3に成熟児にもみられる新生児外科疾患が極低出生体重児に発症した場合の問題がある.第1の問題では,外科的侵襲そのものにはあまり影響されず,初回入院期間に大きく影響される精神発達遅滞がある.また,術後の機能的予後には大きく影響されない長期的QOLの問題があるが,これは母親のPTSD及びQOLに大きく依存している.第2の問題は消化管穿孔に関わる問題であり,長期的予後に影響するものは短腸症候群と新生児·乳児期の栄養障害である.何れの病型による穿孔においても腸管を少しでも長く温存する術式を選択し,例え少量であっても早期に経腸栄養を再開し,静脈栄養に伴う合併症を予防することが重要である.第3の問題は先天性小腸閉鎖症,食道閉鎖症,直腸肛門奇形,腹壁形成異常等に伴うものである.個々の疾患と合併奇形に対する治療戦略は成熟児と大きな差はないが,出生後早期の全身麻酔·手術によるストレスは脳室内出血の危険を大きくし,麻酔中の酸素投与は肺血管抵抗を下げて肺血流量を増やすので,動脈管開存あるいは心不全をきたす可能性が高くなる.従って,個々の疾患によって異なる待機する事の危険性と全ての疾患に共通してある早期手術の危険性を天秤にかけて手術のタイミングを決定する必要がある.

キーワード
超低出生体重児(ELBW), QOL(Quality of life), PTSD(Post-traumatic stress disorder), 消化管穿孔, 壊死性腸炎


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