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日外会誌. 115(3): 169-172, 2014


特別寄稿

医事関係訴訟から読み解くインフォームドコンセントの注意点

金沢大学附属病院 経営企画部
越後純子法律事務所 

越後 純子

I.内容要旨
医療機関が説明義務違反を理由に訴訟に負けることは少なくない.一般に,訴訟事案は個別の報告として紹介されることが多いが,本研究では,多数の判決内容を統計学的に解析することで全体像の掌握を試み,医療事故結果の重症度が及ぼす影響及び詳細な説明を求められる治療法の類型を検討した.
当初,医療事故の転帰が重症である方が,軽症に比して説明義務の違反を認められやすいのではないかと予測したが,統計学的な有意差は認められなかった.治療法については,健康保険の適用がないような標準的治療から外れた治療において詳細な説明を求められる傾向が統計学的有意差をもって認められた.併せて,標準的治療法であっても,リスクが高く,緊急性に乏しい予防的治療については,経過観察の選択肢について,論拠をもって説明することが求められていた.臨床現場で患者に説明を行う際にこのような傾向に配慮することは紛争予防に有効と考えられる.併せて,説明について双方の主張が食い違う場合,診療録に説明の記録がないことは,医療機関の主張する説明内容が訴訟上認定されにくくなることも明らかとなった.

キーワード
訴訟, 説明義務, インフォームドコンセント


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