[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (292KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 115(1): 34-38, 2014


会員のための企画

家族性腫瘍における遺伝子診断の問題点と実際

家族性腫瘍における遺伝子診断の問題点

藤田保健衛生大学総合医科学研究所 分子遺伝学

大江 瑞恵 , 倉橋 浩樹

I.内容要旨
ヒトゲノム解析の進歩により多くの家族性腫瘍の原因遺伝子が明らかになり,患者自身の遺伝子診断のみならず,家系内の未発症者に対する発症前診断が可能となった.近い将来,多くの癌の遺伝的発症素因が明らかになれば,将来の健康を予測し対応する予防医学の時代となり,遺伝子診断は健康管理に有益性をもたらすであろう.その反面,遺伝子診断の結果がもたらす社会的,心理的な問題の存在が明るみになり,特に検査前,検査後の遺伝カウンセリングの重要性が提唱され,各医療機関ではこのような問題に遺伝診療部門が対応している.一方で,近年,唾液でできる遺伝子多型解析は,医療機関を介さない遺伝学的検査という新たなゲノム産業を創出し,安易な検査結果の告知は人々を混乱させている.さらに,次世代シーケンサーによる全ゲノム解析は遺伝学的検査における検出感度を飛躍的に向上させたが,「偶然見つかる目的外の遺伝子異常」という新たな問題を生みだした.刻一刻進化する遺伝子診断技術に対して,つねに時代に即したガイドラインが作成されているので,最新の情報を入手して,最新のスタンダードを意識した診療をおこなうことが重要である.

キーワード
遺伝カウンセリング, 家族性腫瘍, 遺伝子診断, 発症前診断

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。