[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (280KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 115(1): 13-16, 2014


特集

National Clinical Databaseの現状とこれから

4.小児外科領域におけるNCDの利活用―NCDがもたらす小児外科医療のパラダイム·シフト―

自治医科大学 小児外科

前田 貢作

I.内容要旨
小児外科医療においてNCDデータの利活用がますます重要となってきている.
第一は,NCDにより手術症例の全数把握が可能となった事である.小児外科ではほぼすべての臓器を取り扱うため,治療対象となる疾患は多岐にわたる.しかしながら,虫垂炎や鼠径ヘルニアなどの一般的な疾患を除くと,その発生率が数千出生に1人というような稀少疾患が大部分を占める.小児外科専門施設においても1年間に経験可能な各疾患の数は非常に少ないものとならざるを得ない.このような状況下では多施設が共同して短期間に多くの症例数を集めなければ,有用な手術データの解析を導くことは不可能である.NCDデータの利活用はより安全で確実な医療を提供することにつながる.
第二に,日本の新生児·乳児死亡率は世界一低いが,一方で1歳∼3歳の死亡率は世界の20位あたりを推移している.死因の一位は不慮の事故で,この改善には小児救急体制の整備が重要である.こどもの手術に関わる合併症を防ぎ,親が安心して任せる医療環境をつくるためには,子どもの外科手術は小児外科専門医の手によって行われるのが望ましいと考えられる.しかしながら,小児救急領域では,どのような場所でどのような医療が行われているかが十分に把握されていない.全外科医からの入力されたNCDデータを解析することにより,科学的な根拠に基づく小児外科救急医療のあり方および専門医の適正配置について解析することが可能となる.
今後は小児外科医療に携わる側にとっては,このパラダイム·シフトにどう対応していくかで真価が問われるのであろう.

キーワード
NCD, データベース, 専門医制度, 医療品質管理

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。