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日外会誌. 114(6): 312-316, 2013


特集

NOTESの現状と今後の展望

5.経腟経路による婦人科手術

金沢大学 医薬保健研究域医学系産科婦人科

田中 政彰

I.内容要旨
腟は,手術痕なしの腹腔内進入を可能にする特異な臓器である.我々は経腟経路を用いた卵巣嚢腫核出術を2003年より開始,120症例を経験した.安全確実なダグラス窩開放のために,pure NOTESに応用可能な,傘状八光針を用いた経腟超音波ガイド下ダグラス窩開放術を開発した.腟式卵巣嚢腫核出術の腹腔鏡移行率は3%,核出手術完遂率は100%,直腸切開,その他重篤な手術合併症は認めなかった.2009年からの20症例には軟性内視鏡の使用を追加した.経腟的な軟性内視鏡の使用は,腹腔内観察,腹腔内洗浄,腫瘍の牽引を可能にした.術後半年以上経過した平均年齢31.9歳の患者73名に無記名アンケートを行い,妊孕性,性交痛,手術満足度を調査,60%の患者より回答を得た.20歳代の妊娠率は60%,持続する性交痛を訴えた患者はなく,手術に対する満足度は平均4.12点(5点満点)であった.経腟経路を用いた卵巣手術は,低侵襲治療を希望する患者に,腹腔鏡以外の選択肢を提供するものであり,経腟経路を用いた腹腔内臓器手術は,次世代の低侵襲性手術として期待される.

キーワード
腟式卵巣嚢腫核出術, ダグラス窩開放術, 妊孕性, 性交痛, pure transvaginal NOTES

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