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日外会誌. 114(4): 176-181, 2013


特集

進行肺癌に対する拡大手術―最近の動向―

3.心大血管合併切除

福岡大学 呼吸器·乳腺内分泌·小児外科

岩﨑 昭憲

I.内容要旨
最近では小型肺癌の発見率の向上に伴い低侵襲手術の割合が増加し肺癌全体では良好な予後が得られるようになった.一方で依然として進行した肺癌の割合も高いことより治癒を期待した拡大手術が行われている.この章で取り上げる心·大血管はT4に分類されることからT4N0-1M0のStage IIIA,もしくはT4N2M0 Stage IIIBが対象となる.大血管としては上大静脈(以下SVC)と大動脈が主体となり,左心房の合併切除も含まれてくる.手術成績は5年生存率で大動脈が17∼48%,SVCが11∼24%程度であるのに比べ,左心房合併切除は14∼16%と他の大血管切除に比べ低い.これらの心·大血管合併切除肺癌は,一般的な肺癌手術成績と同様にN2では特に予後が不良である.したがってまずN2症例は手術適応から除外するか導入化学療法を選択するべきである.一般的な肺葉切除の術後死亡率0.4%(在院死亡0.9%),肺全摘で1.8%(在院死亡3%)と比較し,大動脈が12.5%,SVCが7.7∼14%,左心房合併切除では9%とかなり高いリスクを伴う手術である.これら手術の特徴として肺全摘の割合が高く約半数を占めていることが挙げられる.したがって術後合併症の発生も高くなる.また手術リスクに加えて手術の複雑さや体外循環の使用など特別な手術手技が要求される.これらをよく検討し術前の機能評価や最新の画像診断を駆使し正確な病巣の進展を評価することが重要である.しかし実際に術中判断に依るところの経験的な要素も含まれている.新規抗がん剤やPET-CTやEBUS-TBNAなどの画像診断の進歩,補助循環を用いない血管内ステントでの大血管合併手術など新しい手法の導入により,今後さらに手術成績の向上も期待できる可能性がある.

キーワード
T4肺癌手術, 心大血管合併切除, 左心房切除, 大動脈切除, 上大静脈切除

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