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日外会誌. 113(5): 451-455, 2012


特集

外科領域における再生医療の応用

8.再生医療を前提にした膵島医療―現状と将来―

1) 京都大学医学部附属病院 肝胆膵·移植外科
2) 京都大学医学部附属病院 臓器移植医療部

岩永 康裕1)2) , 金宗 潤1) , 川口 道也1) , 高折 恭一1) , 上本 伸二1)2)

I.内容要旨
膵島移植は,高い安全性と血糖値の不安定性に対する治療効果が確認されており,糖尿病に対する細胞移植医療の臨床型として確立されつつある.ただし,インスリン離脱に複数回の移植が必要で,ドナー膵不足が深刻な問題である.その解決方法として再生医療が挙げられ,特に膵島組織の成体内再生及び培養系で再生させた膵島様組織の移植が優れたアプローチである.胎生期以降の膵上皮細胞が膵島再生の基となる有力な候補である.動物モデルにおいて,β細胞は,数日の分裂休止期間後に細胞分裂サイクルを再開でき,増殖が可能であることが示唆されている.α細胞は,β細胞への分化転換のメカニズムが明らかにされてきている.膵管細胞は,その増殖と分化によってβ細胞の再生が起こる.腺房細胞の内分泌細胞への分化転換は低頻度ながら生体内で起こることが示された.これらの知見をヒト細胞での研究へと発展させ臨床応用するにはさらにステップが必要であるが,既に再生膵島移植への第一歩を踏み出すステージには上がっていると言える.

キーワード
膵島移植, 再生医療, 膵上皮細胞, 分化転換, 糖尿病


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