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日外会誌. 113(3): 297-301, 2012


特集

日本の心臓·大血管外科レベルは欧米を超えているか?

7.心臓移植

1) 国立循環器病研究センター 名誉総長
2) 国立循環器病研究センター 移植部
3) 国立循環器病研究センター 心臓外科部

北村 惣一郎1) , 中谷 武嗣2) , 小林 順二郎3) , 戸田 宏一3) , 簗瀬 正伸2)

I.内容要旨
2011年9月30日付けで計113例の心臓移植が施行された.わが国の心臓移植の成績は,各施設での症例数は少ないものの良好であり,欧米の一流施設に比して遜色はないと考えている.特に周術期成績は優れており,また10年までの遠隔期成績も国際心肺移植学会(ISHLT)レジストリー(2002年∼2009年)1) の成人心臓移植成績よりも良好にみえる.
日本では周術期成績のリスク因子となるstatus Iでかつ補助人工心臓装着患者が多く,マージナルドナーも含め心臓利用度が著しく高い.さらに,心臓ドナーの年齢が高い.一方,わが国の成績を良くしている要因にはレシピエントの年齢が若く(成人),ほとんどが非虚血性拡張型心筋症であり,生存成績の低い虚血性心筋症(冠動脈疾患)が著しく少ない.心臓移植患者の遠隔死因については現在まで感染症,悪性腫瘍,腎不全の発生などが見られているが,CAV(cardiac allograft vasculopathy)によるグラフト廃絶は認めておらず,日本人間の移植では遠隔期CAV発生はISHLT成績より遅延し,再心臓移植の率は米国より下回る可能性がある.

キーワード
脳死臓器移植法, 心臓移植, 左室補助人工心臓(LVAD), マージナルドナー, 移植成績

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