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日外会誌. 113(2): 191-196, 2012


特集

癌研究における最近の進歩

5.エピジェネティクスの癌診断·治療へ応用

国立がん研究センター研究所 エピゲノム解析分野

牛島 俊和 , 菊山 みずほ , 竹島 秀幸

I.内容要旨
エピジェネティクスとは,異なる組織の細胞が同じ遺伝子のセットをもつにもかかわらず異なる細胞であり続けるための仕組みであり,具体的にはDNAメチル化とヒストン修飾により担われる.エピジェネティック異常は,癌抑制遺伝子の不活化等を誘発し,発癌の原因(ドライバー)となりうると同時に,発癌の結果または随伴現象(パッセンジャー)としても多数存在する.DNAメチル化異常には,点突然変異と異なる特徴があり,その特徴を活かして各種の診断に応用されている.まず,DNAメチル化異常は非癌部でも大量に蓄積しており,その量が発癌リスクと相関する場合があり,発癌リスク診断への応用が行われている.また,DNAメチル化異常は鋭敏に検出可能であり,癌細胞の検出にも用いられている.第三に,経時的変化が少なく,細胞環境の影響を受けにくいことからも診断的有用性が高い.更に,混入する他の種類の細胞の影響を受けにくいことから,ゲノム網羅的な解析によるバイオマーカー分離にも有用である.治療への応用でも,DNA脱メチル化剤は骨髄異形成症候群に,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は皮膚T細胞性リンパ腫に対して既に認可され,臨床で使用され始めている.今後は,標的とするエピジェネティック修飾のうち異常なものに対する特異性の向上,治療効果モニターのためのバイオマーカーの開発,併用する薬剤をどのように選定するかなどが重要である.

キーワード
エピジェネティクス, DNAメチル化, ヒストン脱アセチル化, リスク診断

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