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日外会誌. 113(2): 185-190, 2012
特集
癌研究における最近の進歩
4.癌遺伝子の変異に関する最近の話題
I.内容要旨
近年の大規模な網羅的遺伝子変異解析により癌ゲノムには想定していた以上に多くの変異が生じていることが明らかとなってきた.また,従来のサンガー法とは異なる原理に基づいて核酸配列をきわめて高速に読み取る装置である次世代シークエンサーを用いた解析により,機能的推測からは発見困難であった新たな癌遺伝子や変異頻度の低い癌関連遺伝子,固形癌における多くのrearrangement(染色体再構成)の存在など,さまざまな癌ゲノム情報が明らかにされつつある.癌に生じている多数の変異は癌細胞にgrowth advantageを与え癌細胞の発生増殖に不可欠である“driver変異”とそれ以外の癌細胞増殖に影響を与えず中立的な“passenger変異”とに分類される.各癌腫で高頻度の変異を認める既知の遺伝子に加え,数%の低頻度で変異を生じている多くの遺伝子も癌化に寄与していることが予測されている.
EGFRシグナル伝達経路上の遺伝子である
EGFR,
KRAS,
BRAFなどの変異と一連の分子標的治療薬の効果との関連に見られるように,癌遺伝子における変異の有無は薬剤の感受性予測にも役立っている.現在,多くの施設で大規模癌ゲノム解析が進行中であるが,多くの癌ゲノムの異常のカタログの作成による癌の予防·診断·治療の革新が期待される.
キーワード
遺伝子変異, Driver変異, Passenger変異, 次世代シークエンサー
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