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日外会誌. 112(5): 330-336, 2011
特集
直腸癌治療の最近の動向
7.直腸癌に対する腹腔鏡手術
I.内容要旨
結腸癌に対する腹腔鏡下手術の有用性についてのエビデンスは蓄積され,適応も急速に広がりつつある.直腸癌手術に対する腹腔鏡下手術は,拡大視効果による深い骨盤内の自律神経や膜構造の同定が容易で,精緻な手術ができる可能性がある一方で,技術的には高難度であり結腸癌に比較してその普及は遅れている.腹腔鏡下直腸癌手術の有効性·安全性を臨床試験で示すためには,術後の回復の早さや術後合併症の発生率などの短期成績のみならず,局所再発率を含めた腫瘍学的予後ならびに排尿,排便,性機能などの機能予後についても開腹手術に比較して遜色がないことを示す必要がある.現在までに短期成績の有効性に関するデータは蓄積されてきたが,長期成績に関してはまだデータが不十分であり,国内外のガイドラインにおける推奨度も低いが,最近になり,海外における大規模ランダム化比較試験の結果が得られるようになって来ており,今後の展開が期待される.本邦における腹腔鏡下直腸手術の症例数はアンケートによると未だしっかりしたエビデンスが無いままに増加傾向ではあるが,現時点では試験治療であるとの認識を持って,十分なトレーニングを積んだチームによって適切なインフォームドコンセントのもとに行われるべきである.今後,直腸癌に対する腹腔鏡下手術を安全に普及させるためには,切離,吻合を容易にする器機の開発や高難度の手術教育のためのシステム作りが望まれる.
キーワード
直腸癌, 腹腔鏡手術, 機能温存, ロボット手術, 直腸間膜全切除(TME)
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