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日外会誌. 112(5): 318-324, 2011


特集

直腸癌治療の最近の動向

5.直腸癌に対する肛門温存手術

国立がん研究センター東病院 消化管腫瘍科下部消化管外科

齋藤 典男 , 伊藤 雅昭 , 小林 昭広 , 西澤 雄介 , 杉藤 正典

I.内容要旨
直腸癌における肛門温存手術では,低位前方切除,超低位前方切除,従来の経肛門吻合,そして最近のIntersphincteric resection(ISR)±External sphincter resection(ESR),などが実施されている.とくに下部直腸癌ではDouble stapling techniqueによる超低位前方切除が主であるが,機器使用の限界のため肛門温存を断念し直腸切断術に変更される事もある.しかし術式変更以前に,従来の経肛門吻合,さらにはISRを主とした肛門括約筋部分温存手術,などによる肛門温存の可能性を考慮する余地がある.超低位前方切除は低位前方切除の延長線上の手術で,厳密な意味での定義はない(本文を参考).また従来の肛門吻合とISRは,異なる手術法である.いずれの手術を実施するにも,各手術に対する操作の習熟が必要で,各術式の長所·短所をよく理解し,慎重な適応決定が要求される.もちろん直腸·肛門の解剖と生理に精通する必要がある.各術式により術後排便機能やQOLは異なるため,個々の症例の状況に応じなければならない.また肛門を温存するために,局所再発を助長することがあってはならない.本稿では,下部直腸癌に対する現時点での肛門温存手術について,各手術法の概要や重要な問題点について述べることにする.

キーワード
下部直腸癌, 肛門温存手術, 超低位前方切除術, 経肛門吻合, 肛門括約筋部分温存術


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