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日外会誌. 112(4): 250-254, 2011
特集
先天性心疾患合併小児外科疾患の最新の治療戦略
7.腹部疾患を合併した無脾症候群の治療戦略
I.内容要旨
無脾症候群(以下本症)は多様な心血管系·腹腔内臓器の奇形を有し重症度の高い疾患群である.2000年∼2010年に当院で経験した本症40例のうち手術を要する消化管奇形を合併した症例は壊死性腸炎を除き10例(食道裂孔ヘルニア7例,胃軸捻転1例,臍帯ヘルニア1例,腸回転異常症1例)であった.その中で食道裂孔ヘルニア,腸回転異常症につき手術時期·方法を中心に報告した.
食道裂孔ヘルニアは7例中6例に手術を行った.アプローチは開腹4例,開胸1例(心臓姑息手術時),腹腔鏡1例で,術式はToupet法2例,裂孔縫縮とHis角形成2例,His角形成のみ1例,裂孔縫縮のみ1例(開胸例)であった.縦隔内への胃の嵌入が潜在的肺静脈狭窄の原因となる点,呼吸障害の原因となる点が重視され,手術時期は肺血流が静脈圧となるGlenn手術前に行うことが望まれる.
腸回転異常症は10例中未検索の1例を除く9例に認められた.腸回転異常症単独で手術を要した症例は1例のみであった.全例non-rotation型であり,手術を行った1例を除き8例は手術加療を必要としなかった.
本症に合併する消化管奇形は,その形態が症例によって異なり,一定の術式を当てはめることが困難である.症例毎に術前の検討を十分に行い最適な手術時期,術式を選択する必要がある.特に手術時期に関しては消化管奇形の状態と循環動態双方からの検討が必要であり,心臓血管外科医と密な連携が必要不可欠である.
キーワード
無脾症候群, 消化管奇形, 食道裂孔ヘルニア, 腸回転異常症
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