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日外会誌. 112(3): 177-181, 2011
特集
膵癌診療の現況と課題
5.腹腔動脈合併尾側膵切除術(DP-CAR)の適応と問題点
I.内容要旨
局所進行膵体部癌に対し,尾側膵を腹腔動脈,上腸間膜動脈周囲神経叢,腹腔神経節,左Gerota筋膜,左副腎とともに
en blocに切除する腹腔動脈合併尾側膵切除(distal pancreatectomy with
en bloc celiac axis resection;DP-CAR)は,最大限の局所切除により治療成績の向上を目指した術式である.遠隔転移がなく,上腸間膜動脈·胃十二指腸動脈·下膵十二指腸動脈が温存可能である場合を手術適応としている.1998年4月∼2007年12月で37例に本術式を施行し,35例(95%)にR0手術を施行できた.合併症率は59%で,広い膵断端が原因と思われる膵液漏19例(51%)と,動脈合併切除に伴う血流低下が原因である虚血性胃障害(ischemic gastropathy)5例(14%)が多かった.1年生存率,5年生存率はそれぞれ72%,17%で生存期間中央値は21カ月であった.再発形式でもっとも多いものは肝再発であるが,再発までの期間の中央値は4.3カ月で,肝以外の再発における中央値12.4カ月と比較して有意に早期に発生していた.このことから,癌を包み込むように切除するDP-CARは,局所制御の観点からは許容される術式と考えられるが,早期の肝再発への対策が求められる.2006年以降は術後補助化学療法を施行している.消化管の再建がないため術後のQOLは良好で,化学療法への移行も比較的速やかであり(術後治療開始までの期間の中央値:2.3カ月),集学的治療にも適した術式と考える.
キーワード
膵体部癌, 膵体尾部切除術, 腹腔動脈合併尾側膵切除術(DP-CAR)
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