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日外会誌. 112(1): 5-10, 2011


特集

大動脈瘤治療のup to date

2.人工血管置換術 a)弓部大動脈瘤―特に最新術式と手術成績―

国立循環器病研究センター 心臓血管外科

荻野 均

I.内容要旨
弓部大動脈瘤の外科治療において,従来からの超低体温循環停止法に加え,選択的順行性脳灌流法や逆行性脳灌流法などによる脳保護の進歩と共に,近年,著しい成績の向上をみせている.特に,選択的順行性脳灌流法は生理的灌流で時間的制約が少なく,脳保護の主流となっており,最近ではその安定性から28℃前後の中等度低体温手術も可能とされてきている.到達法は確実な脳,心筋保護や呼吸障害の回避から正中到達が,弓部分枝再建法は4分枝人工血管による個別再建法が,標準術式として既に確立されている.正中到達経由で最も困難な遠位側吻合において様々な吻合の工夫がなされており,Stepwise法やElephant trunk法は有用な吻合法である.一方,弓部を含む広範囲大動脈瘤に対する治療戦略が最近の話題の一つである.左開胸±正中切開,両側開胸(Cram-shell法)などの到達下に一期的に置換するか,高齢者やハイリスク症例にはElephant trunk法を併用した弓部全置換を先行させ,左開胸下の下行大動脈置換もしくはステントグラフト治療を二期的に施行する.さらに,ステントグラフト単独ないしは頸部分枝バイパスを先行させたハイブリッド治療が高齢者やハイリスク症例を対象に試みられており,弓部大動脈瘤に対する治療体系の転換期が近いともいえる.

キーワード
弓部大動脈瘤, 外科治療, 選択的順行性脳灌流, 腋窩動脈, ハイブリッド治療

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