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日外会誌. 111(5): 288-293, 2010
特集
小児臓器移植の現況と課題
4.肝移植
I.内容要旨
生体肝移植が99%を占める日本では,胆道閉鎖症を中心に,年間120∼140例の小児生体肝移植が行われ,手術手技·免疫抑制療法·感染症治療などの進歩により,その成績は向上し,適応疾患や年齢が拡大されてきた.近年,劇症肝不全,代謝性疾患の割合が増えつつあるが,それぞれの疾患に応じた適切なタイミングで移植を行うことが更なる成績向上につながる.小児肝移植後の中長期的合併症である血管·胆管の吻合部狭窄に対しては,標準的肝機能検査だけでなく,定期的,かつ永続的な画像検査が必須であり,早期診断がつけば,インターベンショナルラジオロジーによる低侵襲の処置が可能である.小児長期肝移植患者におけるグラフト肝の線維化に対しては,免疫抑制剤の強化など,適切な免疫抑制療法を心がけ,定期的なプロトコール肝生検にて永続的にフォローアップすることが重要である.今後,移植後30年を経過する症例を迎え,悪性腫瘍の発生の問題など,新たな課題に直面する可能性があるが,生涯に渡りグラフト肝を守り続けるため,患者にも医療従事者にも,安全で効率のよい外来管理を確立する必要がある.改正臓器移植法の施行を機に,脳死肝移植の普及が望まれているが,生体肝移植が中心であるわが国においては,生体ドナーへの身体的,社会的保護,生体移植を受けた家族へのメンタルケアなど,国をあげた移植医療へのサポートが求められる.
キーワード
脳死肝移植, 生体肝移植, 移植実施時期, 吻合部狭窄, グラフト肝線維化
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