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日外会誌. 111(3): 171-175, 2010
外科学会会員のための企画
性同一性障害(gender identity disorder)の外科治療
男性から女性への手術(MtF)
I.内容要旨
性別適合手術(sex reassignment surgery,SRS)は,身体的性別を望む性に近似させる目的で施行される性同一性障害(gender identity disorder,GID)に対する身体的治療法の一つである.その適応は,本人の自己責任·自己決定に加えて,医療者側の十分な審議検討のうえで決定される.
Male to Female(MtF)に対するSRSは,精巣摘出術,陰茎切断術,尿道形成術,造腟術,外陰部形成術の組み合わせからなる.札幌医大では,2003年のGIDクリニック開設以来,12名のMtFに対して陰茎皮膚翻転法により造腟を行うSRSを施行した.平均年齢は38歳,平均手術時間は5.8時間,平均出血量は674ccであり,輸血例はなかった.なお,全例に軽度の創部感染を認めたがいずれも保存的に回復した.超砕石位による下腿筋の挫滅,神経障害,股関節炎は下肢支持方法の変更以後は経験していない.初期の症例を除き,10cm以上の深さの造腟が可能となった.しかし,自己拡張にもかかわらず腟深と腟幅は時間経過とともに浅化·狭小化する傾向があった.なお,排尿機能には術前後で変化を認めなかった.
本邦でSRSを施行している施設は少なく,手術手技に関する情報も限られているため,医学的知見の集積·報告が必要と考えられる.
キーワード
性同一性障害, 性別適合手術, Male to Female
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