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日外会誌. 111(3): 160-165, 2010
特集
外科とリスクマネジメント
6.周術期肺塞栓症
I.内容要旨
肺塞栓症は日本人には少ないと言われていたが,厚生労働省の人口動態統計によると近年増加傾向にあり最近の10年間で2.8倍に増加していると報告されている.肺塞栓症の発症を回避するには予防を行うことが重要となるが,2004年2月に本邦の静脈血栓塞栓症予防ガイドラインが発刊され予防は急速に普及した.最も効果の高い予防は早期離床と積極的な運動であるが,致死性肺塞栓症と有症状肺塞栓症を減少させる最も効果的な予防は抗凝固療法使用による予防である.抗凝固薬は出血性合併症とヘパリン起因性血小板減少症(HIT-2型)などの合併症を発生させる危険性があり,効果は低いが合併症の少ない理学的予防(弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法)のどちらを選択するのかを判断するには,施設独自のマニュアル作りが必要となる.また術前には治療を要する静脈血栓塞栓症を併発している患者(二次予防症例)も近年増加しつつある.これらを総合して静脈血栓塞栓症を予防し,発症した後は重症化防止をどのように計画するかは,病院内でのリスクマネジメントと地域医療における診療連携が重要となる.本邦における周術期肺塞栓症における医療の現状と周術期肺塞栓症の予防をテーマとして実施中である医療安全全国共同行動における行動目標2の役割を説明し,外科におけるリスクマネジメントの立場から概説する.
キーワード
肺塞栓症, 静脈血栓塞栓症, リスクマネジメント, 深部静脈血栓症, 術後血栓症
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