[
書誌情報]
[
全文HTML]
[
全文PDF] (238KB)
[会員限定]
日外会誌. 111(1): 32-35, 2010
外科学会会員のための企画
小腸移植の現状と将来展望
基礎研究
I.内容要旨
小腸移植は,種々の臓器移植の中で末弟とも言える立場で1990年頃に臨床の場に登場した1)
.導入当初のbreakthroughは,免疫抑制剤Tacrolimusの導入による拒絶反応の効果的な抑制であった.ついでズーム内視鏡の導入による拒絶反応の早期診断,IL-2R antagonistによる周術期の免疫抑制導入が成績向上をもたらした.日本においてもナショナルチームによる協力体制が確立され,同じく成績は向上してきている2)
.しかしながら,術後QOLや長期成績という点からは,他臓器と比較してもまだ改善の余地がある.これら臨床の現状については,他稿で総説されるので参照いただくこととし,本稿では,将来的な研究面から以下につき概説する.グラフト提供時から始まる臓器保存の改善,すなわち粘膜バリアー機構の破壊を以下に食い止めるか,拒絶反応をいかにsophisticateされた形でコントロールしていくかという点が当面の研究の課題である.また組織工学による小腸作成の試みも現在までに行われてきている.近年再生医学領域で広く注目を集めている幹細胞の当該領域への応用を目指した研究が必要である.
キーワード
小腸移植, 小腸保存, 再生医療, 間葉系幹細胞, 虚血再灌流障害
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。