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日外会誌. 111(1): 23-26, 2010
特集
消化器外科術後食に関する新しい考え方
4.開腹手術においてもたらされたもの
1)肝手術
I.内容要旨
肝臓は体内の代謝を司る重要な臓器であることから,肝手術後の栄養管理には,病態を考慮した工夫が必要である.肝切除の対象となる疾患は,肝細胞癌,胆管癌,転移性肝癌などの悪性腫瘍や肝内結石などの良性腫瘍など多彩であるが,術後の病態を考慮する上では,その症例に術前肝障害があるかどうかが一番問題となる.本邦での肝細胞癌の大半は背景にウイルス性肝炎があり,何らかの障害を受けている.肝障害のある場合は手術前からの栄養管理が必要で,栄養状態をSGA(subjective global assessment)や身体計測法などで評価し,生体電気抵抗測定法などによって定量化する.術後は35―40kcal/kg/日のカロリー,1.2―1.5kcal/kg/日の蛋白質摂取が推奨され,BCAA製剤は血中アンモニア,脳症の有無などから考慮する.正常肝の場合は,術前の栄養状態は良好であると考えられるが,肝切除量,術後合併症によっては,肝不全状態となる可能性もあるので,栄養の定量的評価は必要である.肝障害の有無にかかわらず,術後早期からの経口·経腸栄養は,周術期の合併症,特に感染症に対しては有用であるとされている.術後長期においては,栄養指導により理想体重の維持をすることで,いわゆるメタボリック症候群に関連した状態にならないようにし,脂肪肝の発症を予防する.
キーワード
術後食, 肝切除, 肝癌, 胆管癌, 栄養
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