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日外会誌. 110(6): 320-325, 2009


特集

胸膜中皮腫の治療法の動向

2.胸膜中皮腫の疫学

奈良県立医科大学 地域健康医学講座

車谷 典男 , 冨岡 公子

I.内容要旨
国際死因分類(ICD)第10回修正がわが国で導入された1995年以降の死亡統計と,石綿ばく露等による死亡リスクについて概説する.胸膜中皮腫の死亡者数は男女とも増加基調にある.いずれの暦年も男性が多く,2007年(最新年)現在,男性652人に対し女性は1/5の130人で,死亡率は人口10万人対0.88と0.20である.5歳年齢階級別死亡数は,男性は70-74歳を頂点とする左裾が長い一峰性分布を示す.女性も同じく左裾の長い一峰性の分布を描くが,頂点が5歳高齢側に傾いている.男性の出生コホート分析は,概ねいずれの年齢階級別死亡率も出生年が遅いコホートほど高い傾向にあることを示している.石綿は胸膜中皮腫の原因物質であるが,石綿取扱い作業で千人あたり1年から2年に一人超の胸膜中皮腫死亡が発生するような高い死亡リスクがコホート研究で確認されている.近隣ばく露の影響範囲は,使用石綿の種類や量などによって異なるが,発生源から2,000m前後まで胸膜中皮腫を含めた中皮腫死亡の有意なリスク上昇が認められている.

キーワード
中皮腫, 死亡率, 石綿(アスベスト), 近隣ばく露

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