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日外会誌. 110(5): 266-270, 2009


特集

胸部大動脈瘤の治療―現状と将来―

3.ステントグラフト内挿術(適応,成績,合併症)2胸部下行大動脈瘤

1) 奈良県立医科大学 放射線科
2) 奈良県立医科大学 胸部·心臓血管外科
3) 奈良県立三室病院 放射線科

吉川 公彦1) , 阪口 昇二1) , 伊藤 博文1) , 市橋 成夫1) , 多林 伸起2) , 谷口 繁樹2) , 東浦 渉3)

I.内容要旨
胸部大動脈瘤に対する外科手術の治療成績は近年向上しているが,腹部大動脈瘤に比べるとその侵襲が大きいことより,必ずしも満足いくものとは言えず,対麻痺などの重篤な合併症を起こす危険性もある.そのため低侵襲治療としてのステントグラフトの有用性は高く,解剖学的適応があれば,外科手術ハイリスク例はもちろん,リスクがない例でもステントグラフト内挿術が行われることがある.胸部大動脈瘤のうち最もステントグラフト内挿術の良い適応とされるのは下行大動脈瘤であり,現在,TAG(Gore社製,USA)とTalent(Medtronic社製,USA)の2種類の企業性ステントグラフトが使用可能である.ステントグラフト内挿術の治療成績は良好であり,人口の高齢化と動脈硬化症の増加を背景に,今後,ステントグラフト治療は益々発展·普及することが予想されるが,適応拡大と治療成績の向上のためには,科を超えたチーム医療ならびにシステムの細径化や枝付きステントグラフトを含めたさらなるデバイスの改良が必要である.

キーワード
胸部下行大動脈瘤, ステントグラフト内挿術, 対麻痺, エンドリーク

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