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日外会誌. 110(4): 184-190, 2009


特集

小児外科疾患術後患者の長期予後―成人期における諸問題―

3ヒルシュスプルング病

九州大学大学院 小児外科

田口 智章 , 家入 里志

I.内容要旨
ヒルシュスプルング病は,小児外科医が長年,研究や治療の対象にしてきた重要疾患のひとつで,手術法として正常神経節腸管を肛門部に吻合することにより根治できる疾患と考えられてきた.そこで教室で経験した本症のうち成人期に達した症例についてアンケート用紙を送付し現在の状態を調査した.
その結果,排便の自立は100%,便意は95%,便の識別も92.5%で可能であった.下痢は「ときどき」は47.5%と多かったが「ほとんど毎日」は7.5%程度,便秘も「ときどき」が35.0%とかなりの症例にみられたが,「ほとんど毎日」は2.5%と少なかった.特に社会生活で問題となる失禁と汚染では,失禁は「下痢の時のみ」が12.5%,「ときどき」が5.0%で,「ほとんど毎日」が0%,汚染は「ときどき」が12.5%,「ほとんど毎日」が2.5%であった.排便スコアはExcellentとGoodをあわせて87.5%がGood以上で比較的良好といえる.しかし,完全に正常と考えられる8点満点はわずかに10人(25%)であった.学歴と職業は良好で,それなりの社会生活および家庭生活を営み,社会に対して貢献していると思われる.
成人に達した症例ではおおむね良好な排便機能とQOLが得られ,排尿·生殖機能に関しても良好である.しかし厳密に評価してみると,完全に正常な排便機能を有している割合はそれほど多いとはいえない.我々小児外科医はその事実を真摯にうけとめ,より良好なQOLをめざして努力しなければならない.

キーワード
ヒルシュスプルング病, 長期予後, 失禁, 汚染, 便秘


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