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日外会誌. 110(3): 144-147, 2009
外科学会会員のための企画
癌幹細胞研究の最前線
がん幹細胞研究の最前線
I.内容要旨
幹細胞は,分化細胞を供給すると同時に,自分自身を産生する自己複製能の能力を兼ね備え,環境ニッチに制御されながら両者のバランスを保ち,組織の恒常性を維持している.がん組織も,このような幹細胞システムによる階層構造によって成り立っているという「がん幹細胞仮説」が提唱されている.これまで,表面抗原による細胞分離技術と免疫不全マウスへの移植実験により,白血病や様々な固形腫瘍で,腫瘍形成能を持つ一部の細胞集団が特定できることが報告され,がん幹細胞仮説を裏付ける証拠とされてきた.一方で,異種細胞移植による実験系の問題なども指摘されるなど,当初考えられていたような幹細胞の概念が,単純に,すべてのがんに適用できるかどうか議論となっている.階層構造の有無について未だ明らかではないものの,従来のようにがん組織を単一のものとして扱うのではなく,腫瘍形成能のあるものとそうでないもの,未分化性を示すものと分化傾向を示すものなど,その機能的不均一性を詳細に解析することは,がんの本態解明に有用な情報であることは間違いがない.また,これまでの研究で,がん組織と正常幹細胞の間に,発現分子や制御シグナルの興味深い共通性の存在が示唆されており,この共通性を切り口に,がんの特性の理解を進めることは,将来,新しい治療法の開発や診断技術の向上に寄与することが期待される.
キーワード
がん幹細胞, 階層構造, ニッチ, 治療抵抗性
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