[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (255KB) [会員限定]

日外会誌. 110(2): 90-93, 2009


外科学会会員のための企画

医療倫理とその実践

日本の医療倫理

鶴見大学 歯学部

関根 透

I.内容要旨
現在,日本の医療倫理として最も実践的な行為は「インフォームドコンセント」である.今や,インフォームドコンセントは日本の医療社会で広く普及した倫理的な医療行為である.しかし,欧米から移入されたプロセスのため,その内実はまだ戸惑いも感じられる.そのため,日本の医療風土に適した日本式のインフォームドコンセントが行われている.「日本式のインフォームドコンセント」とは,医療現場で患者に「適切な説明」を行い,患者から「理解を得る」努力をして,医師と患者の良好な信頼関係を構築しようとする実践的な行為である.これは日本人の性格や社会に適合した医療倫理として,患者のより良いコンプライアンス造りに貢献している.しかしながら,最近は日本人の人権思想の高まりや治療における選択肢の豊富さから,信頼関係に中心を置いた日本式のインフォームドコンセントは本来の姿ではないとして,患者の権利を尊重する「アメリカ式のインフォームドコンセント」に関心がもたれている.医学教育では,患者の人権を尊重するアメリカ式のインフォームドコンセントが医療倫理としてモデル・コア・カリキュラムで教育されており,国家試験にも出題されている.
なお,『医薬品の臨床試験に関する実施基準(GCP)』は一般の医療現場と異なっており,日本でもアメリカ式のインフォームドコンセントが『ヘルシンキ宣言』に則って厳格に遵守されている1) .

キーワード
インフォームドコンセント, 医療倫理, 信頼関係


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。