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日外会誌. 110(1): 7-11, 2009
特集
感染性心臓·大動脈疾患の治療
3.感染性心内膜炎―大動脈弁および大動脈弁位人工弁―
I.内容要旨
感染性心内膜炎はDuke臨床診断基準に基づき,その診断は血液培養所見,心エコー図所見が重視される.近年メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を起因菌とする本症の発生頻度は高く激烈な感染所見を呈し塞栓症の危険性が高い.経食道心エコー図は侵襲度は高まるものの,人工弁感染診断など,微細,複雑な病変診断のために有効な手段である.
心臓内,外の合併症により抗菌薬治療のみでは奏功しないこともあり,手術時期を的確に判断する必要がある.脳合併症は初発症状であることも多く,従来,脳梗塞,脳出血直後の手術は回避されてきた.現実には心不全などの合併症のために緊急手術を要することもあり手術時期決定に難渋する.我々はnafamostat mesilateを人工心肺時の抗凝固として併用し,ヘパリンを通常量の1/4-1/5に減量することで致命的な脳出血合併症を予防し,本症の発症早期に手術を施行している.
大動脈弁位感染性心内膜の外科手術手技を複雑にする原因のひとつに,時にLV-Ao discontinuityきたす大動脈弁輪部膿瘍の存在がある.術式はまず膿瘍腔を徹底的に郭清し欠損部位は異種心膜を使用し新しい弁輪を形成する.大動脈基部置換術が第一選択で,再建導管には機械的適合性に優れた自己肺動脈グラフト(Ross手術)やステントレス生体弁を使用している.我々のLV-Ao discontinuityを合併した活動期感染性心内膜炎9例の経験では病院死亡,遠隔死亡は認めず,術後5年の心事故回避率は66.7%と良好な結果が得られた.
キーワード
脳合併症, LV-Ao discontinuity, 大動脈基部置換術, Ross手術, ステントレス生体弁
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