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日外会誌. 109(3): 133-142, 2008


特集

消化器神経内分泌腫瘍の診断と治療

4.膵内分泌腫瘍の発生論

山形大学 消化器·一般外科

木村 理

I.内容要旨
高齢者剖検例の詳細な病理学的分析によれば,膵内分泌腫瘍は微小なものを含めると,非常に高頻度に認められる.それらの病理組織化学的あるいは免疫組織化学的な検討では,腫瘍が既存のランゲルハンス島(Langerhans島,ラ島)に接して存在する症例と,既存のラ島から独立して孤立性に存在する症例がみられる.また微小膵内分泌腫瘍の内部あるいは腫瘍の辺縁には膵管構造あるいは腺管構造が約60%の頻度でみられる.膵管上皮細胞や腺房細胞にもホルモン産生が認められる.これらの事実を総合すると膵内分泌腫瘍の発生母地として,第一にランゲルハンス島細胞,第二·第三に膵管上皮内および腺房内の内分泌細胞あるいは多分化能を有する幹細胞が考えられる.内·外分泌細胞への分化を合わせ持つ腫瘍として,ductuloinsular tumorや,acinar endocrine cell tumor,さらに,duct-acinar-islet cell tumorが存在することは,その裏付けになっていると考えられる.つまりわれわれは膵内分泌腫瘍の発生母地として3つの可能性,すなわちラ島内の内分泌細胞,膵管内の内分泌細胞,腺房細胞内に孤立性に散在する内分泌細胞からの発生を考えている.
また,微小膵内分泌腫瘍を有する症例の約25%において,内分泌腫瘍の周囲に径500um以上の大きなラ島や,mean(平均)±2SD(標準偏差)以上の径を有するラ島が認められることは,ラ島の成長を促す因子が存在する可能性があることを示唆している.

キーワード
膵内分泌腫瘍, 免疫組織化学的検討, 発生母地

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