[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (249KB) [会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 108(5): 263-266, 2007


特集

癌診療ガイドラインが臨床現場に与えた影響

7.肝癌―科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン―

東京医科歯科大学 肝胆膵·総合外科

有井 滋樹

I.内容要旨
2005年に厚生労働省診療ガイドライン支援事業により「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」が幕内雅敏東大教授(現日本赤十字社医療センター)を班長として日本肝癌研究会のメンバーにより策定された.このガイドラインが医師の肝癌診療に与えた影響についてアンケート調査の結果の一部を紹介するとともに,ガイドラインに対する私見を述べた.アンケート調査では肝癌診療を専門とする医師の73%がこれを見ており,その80%が「役に立つ」と評価し,20%の医師に「治療方針の変更もたらした」という結果であった.専門としない医師では認識度は多少低下するが,見た医師の80%前後が参考にしていた.また,専門家の43%,非専門家の30%弱が「裁量が拘束される」と答えた.医療訴訟については「増加する」と回答した医師が「増加しない」を上回った.以上の結果から本ガイドラインは比較的広く認識,活用され,かつ診療に大きな影響を与えていると判定される.ガイドラインの限界,問題点についても指摘した.本ガイドラインではリサーチクエスチョンの45%は明快なエビデンスのない推奨度Cである.この項目に対する推奨には医師の良識ある裁量を認める表現が必要であろう.医学·医療の特性を踏まえたうえで,エビデンス原理主義,ガイドライン至上主義に陥らずに,ガイドラインを活用しなければならない.

キーワード
肝癌診療ガイドライン, アンケート調査, EBM, 医師の裁量, 医療訴訟

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。