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日外会誌. 108(3): 120-124, 2007


特集

癌治癒切除術後サーベイランスの意義と問題点

5.胃癌

新潟県立がんセンター新潟病院 外科

梨本 篤 , 薮崎 裕 , 中川 悟

I.内容要旨
胃癌術後の再発形式およびサーベイランス・プログラムにつき文献的な考察を加え検討した.対象は初発単発治癒切除胃癌1,323例中,術後再発が認められた151例(11.5%)である.再発形式は血行性再発が最も多く,腹膜再発,リンパ節再発,局所再発の順であったが,文献的には腹膜再発が最も多かった.低分化型腺癌は腹膜再発,リンパ節再発が多く,分化型腺癌では血行性再発が3/4を占めた.pT1では90%が血行性再発,10%がリンパ節再発であった.腹膜再発はpT3から急に増加した.1年以内では血行性再発と腹膜再発がほぼ同数であった.2年以内に74.1%が再発し,3年以内に88.1%が再発していた.pT1症例では術後5年経過以降にも再発例がみられた.術後の50%生存期間は,リンパ節再発,血行性再発,腹膜再発に差はなく,再発後の生存期間にも差はみられなかった.この結果を踏まえて,早期胃癌および進行胃癌に対する術後サーベイランス・プログラムを作成した.術後10年まで続けるが,5年以降は,毎年基本検診,職場検診や人間ドックを積極的に受けるよう指導している.サーベイランスは同一のものである必要はないが,標準となる計画はあるべきである.胃癌術後サーベイランスによる再発例の延命効果については賛否両論である.今後,術後サーベイランスが延命に寄与しているか否かを科学的に明らかにするためにはRCTが必要である.

キーワード
胃癌, 治癒切除, 再発形式, 術後サーベイランス, 延命効果


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