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日外会誌. 107(6): 273-277, 2006


特集

縦隔疾患に対する外科的アプローチ

5胸骨吊り上げ式内視鏡下手術

大阪警察病院 呼吸器外科

城戸 哲夫

I.内容要旨
胸腺疾患に対する内視鏡下胸腺手術(VATS-T)が開始されて14年が経過した.胸骨吊り上げによる内視鏡操作空間の良好な確保がVATS-T適応症例の増加に繋がっている.VATS-Tは胸骨切開を加えない共通項と胸腺切除範囲の相違で頸部アプローチ,両VATS,胸骨下アプローチなど種々の方法が選択される.本邦では重症筋無力症に対してextended thymectomyやmaximal thymectomyの目的で胸骨吊り上げ法を併用した頸部切開を加えた両VATS,もしくは全方位型を基本とした胸骨下アプローチ法が用いられる.重症筋無力症や非浸潤性胸腺腫に対するVATS-Tは胸骨縦切開との短期の前向き比較試験で有用であることが報告されている.胸腺疾患に対する手術アプローチは低侵襲手術への移行,転換を背景にVATS-Tへ向かっている.しかし,VATS-T症例の蓄積とともに内視鏡下手術特有の問題点も指摘される.この問題の解決と今後の長期予後の前向き比較試験結果でVATS-Tの患者への真の利益が証明されるであろう.

キーワード
重症筋無力症, 胸腺腫, 胸骨吊り上げ法, VATS thymectomy (VATS-T), VATS extended thymectomy


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