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日外会誌. 107(6): 262-267, 2006


特集

縦隔疾患に対する外科的アプローチ

3胸腺上皮性腫瘍の外科治療成績

慶應義塾大学医学部 外科

堀之内 宏久 , 朝倉 啓介 , 木村 吉成 , 竹内 健 , 川村 雅文 , 渡辺 真純 , 江口 圭介 , 小林 紘一

I.内容要旨
胸腺腫を含む胸腺上皮性腫瘍は頻度の多い腫瘍ではない.大半の胸腺種は外科治療によって良好な予後が得られるものの,術後の再発,進展を呈する症例では治療に難渋することもある.当科にて1985年より2005年までの胸腺関連腫瘍のうち組織学的に胸腺腫あるいは胸腺癌と診断された症例で,予後を追跡でき,病理標本をWHO分類に当てはめて再検討した131例を対象として外科治療成績を検討した.男性76例,女性55例,平均年齢53歳(20歳から80歳)正岡の分類ではI期42例,II期43例,III期23例,IVa期15例,IVb期1例,胸腺癌(扁平上皮癌)7例であった.WHO分類ではType A 7例,Type AB 23例,Type B1 30例,Type B2 27例,Type B3 29例,Type C 15例であった.実施手術は生検5例,腫瘍切除5例,胸腺摘出5例,拡大胸腺全摘術が65例,腫瘍切除に合併切除を行った症例が4例,拡大胸腺全摘術に合併切除を行った症例が51例であった.合併切除の内訳は播種巣1例,胸膜合併切除14例,心膜合併切除が10例,肺合併切除が4例,2種類以上の組織,器官,臓器を合併切除した症例が22例であった.Masaokaの分類を用いて予後を検討したところ,5年,10年,15年生存率は,I期で100%,100%,100%,II期で100%,100%,87.5%,III期で100%,87.5%,87.5%,IVa期で71.1%,53.3%,53.3%,胸腺癌症例では42.9%,42.9%,0%であった.IVa期および胸腺癌の予後は他の病期と比較して有意に予後が不良であったが,I期,II期,III期の間には生存には有意差を認めなかった.WHO分類では,Type Aでは5年生存率100%,Type ABでは5年,10年,15年生存率が100%,100%,100%,Type B1では100%,100%,75.0%,Type B2では92.6%,86.4%,86.4%,Type B3では95.5%,95.5%,81.8%Type Cでは57.1%,42.9%,0%であった.Type Cの予後はType B3と比較すると予後の悪い傾向が認められた.Type Cとその他の群との比較ではType Cの予後が有意に不良であった.胸腺上皮系腫瘍の外科治療成績は胸腺癌も含め,病理組織学的性格と腫瘍の浸潤の程度によって決定されると考えられた.胸腺上皮系腫瘍の内でも浸潤型胸腺腫(Type B3)および胸腺癌(Type C)の治療成績は良好とは言えず,生検による病理組織学的検討と画像診断による浸潤傾向の診断を行って集学的治療を行うことが不可欠であると考えられた.

キーワード
胸腺腫, 胸腺癌, 正岡分類, WHO分類, 外科治療

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