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日外会誌. 107(2): 59-63, 2006
特集
悪性腫瘍に対する内視鏡外科の現状とその評価
2.甲状腺癌
I.内容要旨
甲状腺においても内視鏡下手術が導入されてきている.内視鏡下甲状腺切除は,CO2ガスを使用し腋窩や乳輪,前胸部からアプローチする完全内視鏡手術と頸部や鎖骨下方の前胸部に小切開をおきCO2ガスなしで創部を吊り上げることによって行う内視鏡補助下手術に大別される.多くは良性腫瘍が対象であり,甲状腺癌に対するものは少ない.
甲状腺乳頭癌における内視鏡下手術の報告例は1~30%(平均7.9%)にすぎない.その大半がCO2ガスを使用しない内視鏡補助下手術例であり,適応としては微小乳頭癌や3.5cm以下の比較的小さい腫瘍でなおかつ術前にリンパ節転移が陰性と診断されているものや低悪性度群などである.また,報告例の大半がリンパ節郭清非施行例で気管周囲郭清34%,頸部郭清まで施行されたのは15%であった.
濾胞癌においては,リンパ節郭清の必要のない微少浸潤型濾胞癌で5cm以内のものが最適であり,これらは濾胞性腫瘍として葉切除後に診断される場合が多い.
髄様癌においては,RET遺伝子検査が普及し,多発性内分泌腺腫症保因者の予防的甲状腺全摘術が施行され始めてきており,本術式の導入も今後の課題となる.
以上より,甲状腺疾患の内視鏡手術はまだ保険適応にもなっておらず,ましてや癌症例に関しては充分な予後等の検証は全くなされていない.現時点で適応症例を慎重に選択し,症例を重ねていくことが重要である.
キーワード
甲状腺癌, 内視鏡下手術, 送気法, 吊り上げ法, リンパ節郭清
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