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日外会誌. 107(1): 40-46, 2006


外科学会会員のための企画

組織移植の現状と展望

心臓弁及び血管

東京大学医学部 心臓外科

本村 昇 , 高本 眞一

I.内容要旨
本邦の組織移植医療には心臓弁・血管,皮膚,膵ラ氏島,骨が含まれ,これらを統括する学術団体として日本組織移植学会がある.組織移植を進める上で社会制度上重要な点は,腎臓角膜とは異なり,法律による規定がないことである.それ故に自らがガイドラインを設定し厳しい自己管理の下に進める必要がある.現在活動している心臓弁・血管の組織バンクは全国に5カ所あり他施設にもシッピングをしているのは2カ所のみである.ドナー情報は日本臓器移植ネットワークから杏林大学移植センターを通じてもたらされる.専属の組織移植コーディネーターを中心に組織摘出・保存処理・シッピングといった日常業務を進めている.ドナーの年齢上限は60歳(静脈は70歳)とし,現在までのドナー数は89例である.組織の使用は供給数が少ないためその適応を絞り,心臓弁・血管は感染性疾患に,静脈は肝臓移植に使用している.これまでの使用症例数は270例以上にのぼる.外部施設にもシッピングしているが,東大組織バンクは同種組織のdistributorではなく,移植医療システムのdistributorであるとの立場から,組織移植医療発展への貢献を条件にシッピングしている.大動脈弁の術後急性期成績は術前重症度を反映した数字であるが,急性期を乗り越えた症例の中期成績は良好であった.今後再生医療との関連で組織移植医療のネットワークと方法論はますます重要性を増すこととなるであろう.

キーワード
同種組織, 組織移植, 組織バンク, 血管移植, 感染性心内膜炎


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